その責任は誰がとるのですか?
日本では責任の所在が非常にあいまいです。中小企業も例外ではありません。もしかしたら、うまく責任を逃れた人が出世をして、責任をかぶった人が出世できない、なんてこともあるのではないでしょうか。
これは、中小企業経営者に組織戦略がなく、役割と責任についてルールの決め方を知らないことが原因です。目標設定から計画の立て方、行動や評価まで、ビジネスと関係のないはずの倫理観や精神論と混同している経営者もいます。
今回は、小さな会社を成長させるためにルールとして決めておきたい、役割と責任についてご説明します。正しいルールで運用すれば、責任を取らない上司、言い訳をする部下、そんなくだらないストレスから解放されることでしょう。
組織作りとは?
基本的な話として、組織づくりについて考えてみましょう。組織とは何でしょうか。
人材を育てる?
人材を集める?
どのような?
どうやって?
チームワークって?
明確に答えられる人は意外と少ないです。日本の経営者は「良い人材が育てば」「良い人材が見つかれば」など、知らず知らずのうちに会社の成長を人材頼みにしてしまいがちです。結果人材は育たないし見つからないので、中小企業は成長しません。
◇ 組織とは分業のしくみである
チームワークがいいとは、分業ができている状態を意味します。そして会社を成長させる組織づくりとは、分業を担える人材育成のことを言います。多くの経営者がこのことに気がついていません。
分業について詳しく説明することはここでは割愛しますが、分業の仕方は主に下記の3つです。
1. 役割と責任でわけた『階層分業』
2. 仕事の種類でわけた『職能分業』
3. 担当する内容でわけた『職務分業』
今回は1番目の、役割と責任でわけた『階層分業』、をクローズアップしてルールの確認をしていきましょう。
2. 役割と責任
役割と責任でわけた『階層分業』は、3つの階層にわけることができます。例えば、TOPと幹部とスタッフ、と名付けるとすれば、それぞれの役割と責任は下の図の通りです。
TOPは株主にVISIONを約束し、幹部はTOPに目標・計画を約束し、スタッフは幹部に計画の実行を約束します。幹部とスタッフの違いは明確です。なんとなく仕事ができるから幹部とか、長くいるから幹部とか、面倒見が良いとか、そんな違いではありません。
◇ 目標・計画は幹部がつくる
とても多い間違いとしては、スタッフに目標・計画を立てさせるということです。もちろん、名ばかり幹部もスタッフと同じように目標・計画を立て、実行します。これではスタッフと幹部の分業がなされているとはとても言えません。目標・計画は幹部がつくり、スタッフが実行するのです。
◇ 評価基準も役割に応じて
分業ができていない中小企業は、評価基準がかなり不透明です。運良く売れる地域や顧客を引き継いだ人が評価されたり、やる気を見せて元気な人が上司に気に入られて評価されたり、よくあることです。役割と責任を明確にすることで、今まであいまいだった評価基準も、より公平にすることができるでしょう。
スタッフが評価される一番大事なことは、計画通りに実行したかどうかであるべきです。無理な数値目標を達成できなくても、スタッフの責任ではありません。
3. まとめ
多くの経営者が、自身の分身をつくろうと採用・育成を試みますが、お互い不満が出てストレスになるだけです。人材が来ない、育たない、定着しない、その原因である組織戦略を見直してみましょう。
小さな会社が成長するための組織づくり、その鍵は分業です。もちろん、はじめは完全な分業ではなく、兼業する必要もあるでしょう。しかし、計画的でないと、いつまでたっても分業はできません。今はまだ少ない人数でも、将来的な分業計画を立ててみてはいかがでしょうか。