昨今の目まぐるしく早くアップデートされるテクノロジーを見ていると、これから無くなっていく仕事、淘汰されていく業界などを常に考えてしまう。
今回のコロナの影響によってテクノロジーの浸透は加速した。これまでテクノロジーにあまり目を向けてこなかった人たちも強制的に現実を見なければいけない世の中になってしまった。
そんな中で、今年の4月に日本海事検定が主催する第二回海事アカデミアというオンラインセミナーにゲスト講師として参加をさせてもらった。新入社員〜3年目までの若手を対象としたセミナーだったが、管理職の人たちも参加して幅広い層にお話しする機会があったのだ。
物流・海運業に携わる人たちに向けてのセミナーだったんだけど、自由に内容を構成しても良いとのことで一応若者向けだったので、これからの時代のにグローバル人材になるためについて30分お話しした。
こんな内容だ。
物流業界で働く若者向けにセミナーをする
セミナー後の若者との対話はこちらの記事にまとめています。
最近日本の若者とお話しする機会が多い。 「あぁ。近頃の若者はこんなことに悩んでいるんだ」と40歳になったおっさんの僕は、自分の若かりし時の悩みと比べてその違いに驚いている。
セミナーはお陰様で好評だったようで、セミナー後に特典でZoomでお話ししませんか?と提案をしたら10名以上の新人、管理職の人たちとお話しすることになった。
このように好評なセミナーにすることが出来たのは僕の実力だけではなく、元ネタが良かったからと思っている。
今回はその元ネタ紹介をしたい。それは故・瀧本哲史著の「僕は君たちに武器を配りたい」だ。
初めてこの本を読んで以来、何回も読み返している名著で僕の人生にも大きな影響を与えてくれた1冊だ。この本の何が凄いかというと2011年に書かれたものだけど、10年経った2021年の現在において完璧に未来予測をしている。
これからの資本主義社会を生き抜くための本質が書かれているので紹介していこう。
コモディティーになってはいけない
まずこの本から強烈なインパクトを受けたコモディティーというワードがある。コモディティーとは取り替えが容易なもので、昨今では高学歴な医者・弁護士・銀行員なども何もしなかったらコモディティーに分類されてしまうという。
一昔前は知識労働者や難しい類の有資格者の将来は安泰と言われていた。しかしインターネットやテクノロジーの発達が進むにつれ、これらの知識は検索したら誰でも簡単に入手できる。
また教育コストは下がり、彼らが長時間かけて暗記した情報の価値が暴落してしまったのだ。
高学歴人材でも買い叩かれてしまう。
インド人がアメリカ人に数学を教える時代ですし。
そのために弁護士であったとしても、仕事が取れる弁護士と、コモディティーとして価格競争に陥る弁護士の二極化が進んでしまった。現在はそんな時代なのだ。
これからの資本主義とは?
著者の瀧本さんは京大で学生に起業論を教えていて、彼の著書は主にこれからの時代を担う日本の若者向けに書かれているものが多い。
日本の若者がビジネスや社会活動を通してより良い未来を生きていくには本物の資本主義を理解しなければいけないという。
著者が述べる資本主義の本質的なポイントはこのようなものだ。
・より良い物が、より多く
・同じ品質なら、より安く
技術革新によって、より少ないコストでみんなが欲しい物を生産出来るようになった。そして、より効率を追求した企業がよりお金を増やしていく。
過去30年の日本の衰退、中国の成長を見ると「確かに」と思う。
ひどい衰退っぷりですね。。
日本の銀行、証券会社、家電。。コモディティやな。SONYは復活したけど。
例えば、君がスーパーでティッシュを買うときに、特に大きなこだわりがなければ価格が安い方を選ぶだろう。同じようなものであれば安い方が良いと思うのはこの資本主義社会においては一般的なことである。
そしてテクノロジーがこの資本主義の競争をより激しいものに変えてしまった。古き良き昭和の時代であれば、日本人は日本でだけ商売していてもある程度は成り立った。日本の1億2,000万という人口は世界的にも多い方なのだ。
しかし、インターネットの登場して以来 競争相手は人件費が安い国に移っている。一昔前(平成初期)は中国の人件費が安く、多くの日系企業は中国に拠点を移し中国製造(Made in China)が主流だった。
その後 中国の経済が伸びていき、中国人の人件費が上がってしまったため、更に安い東南アジアやインドなどの国に製造がシフトしている。
2021年以降ではインド・アフリカ進出が市場として魅力になって来ているし。
グローバル資本主義における人材
昨今では日本は安い国だと言われるようになって来ているが、僕が活動するタイと比べるとまだ人件費は高い。例えばプログラマーであればコストが高い日本人である必要はなく、もっと安くて優秀な人材はいくらでも世界中にいるのだ。
インド人だったら英語話せるし、プログラミングはお得意だし。
これからの日本の若者たちは世界の優秀で更にコストも安い人材との競争をすることになる。そんな市場においてこれから生き残りをかけていくにはどのようにすれば良いのか?
この本はそれについて明確に教えてくれている。
6タイプの漁師
分かりやすい例として、まず6つのタイプの漁師を紹介し、次に今後必要とされるタイプ(生き残るタイプ)を紹介していこう。
・トレーダー漁師
取った魚を交換して生計を立てている漁師。海で取れた魚を、山頂に住む人たちと野菜と交換したりする。
・職人漁師
熟練の漁師。長年の経験を元ににどこの漁場で魚が取れやすいかを熟知しているし、短い時間で一般の漁師より多く魚を釣ることが出来る。
・マーケッター漁師
取った魚を缶詰や干物にしたり、加工をする漁師。
・イノベーター漁師
これまでは一本釣りが主流だったが、底引網や定置網、ルアーを開発したりする漁師。
・リーダー漁師
自分以外にの漁師たちを引き連れて、効率的に多くの魚を取るリーダータイプの漁師。
・投資家漁師
自分は漁に行かず、自分の船、燃料、チームを所有。取れた魚を卸売で販売したり、小売までの流通も作っている。
漁師でも色んなタイプが存在してとても面白いっす。
さて、これらの6つのタイプの漁師だが、生き残れるタイプと生存が厳しいタイプが存在する。
厳しい職業:トレーダーと職人
これからの時代において残念ながら生き残りが難しいタイプはトレーダーと職人だ。
トレーダーが難しい理由
単に商品を右から左に流して利ざやを抜く商売はもはや難しい。もちろん商品による。2021年時点で不足している半導体やレアメタルなどを集めることが出来れば高い利益が取れるだろう。
しかし、一般の商売ではそうは行かない。インターネットの登場により、安い仕入れ先は簡単に見つかり、価格も丸見えの状態で顧客には簡単に比較されてしまう。
職人が難しい理由
また熟練の職人技術が必要とされるケースが少なくなって来ている。一昔前は安かろう悪かろうの中国製の製品だが、最近の中国製品の品質は十分に高い。しかも安い。世の中に登場したら情報は直ぐに共有されてマネをされる。
行きすぎた付加価値も問題だ。日本のボタンだらけのTVリモコンを誰も使いこなせないように、必要な機能でリーズナブルな価格のものを作ったLGやサムスンなどの韓国製TVが勝利したことを忘れてはいけない。
今後、重要になってくるスキル
6つのタイプの漁師で以下の4つはこれからも重要とされる。これらのスキルを1つ持っていればOKというわけでなく、4つをバランスよく持っている方が貴重な存在になれる。
それぞれのタイプの特徴を説明していこう。
・情報感度、分析力が高い
・顧客を再定義する
・ブランド、ストーリーを作る
・業界の表も裏も知り尽くす
・既存の価値を掛け合わせる
・既存の常識の反対をする
・熱狂的、クレイジーである
・凡庸な人材を適材適所で使いこなす
・自分の真逆の性格のパートナー
・ゼロからプラスを生む
・長期的なリターンを求める
・人に投資をする
・自分自身を投資する
・管理可能なリスクを積極的に取る
・トレンドとサイクルを見極める
著者は投資家のように生きることを推奨しているので、投資家のボリュームを濃く紹介した。
コモディティーにならない為の具体的な活動例
この本を読んで僕自身もこの4つのタイプを意識して活動をしている。例がある方が分かりやすいと思うので僕が物流業界を舞台に、実際に意識してやって来たことを紹介しよう。
マーケター
僕自身は国際物流という業界においてWebマーケティングを積極的に活用し、TwitterやYouTubeを使い、物流の教育情報を発信している。
国際物流業界はスケールが取れる方が強い業界なので大手企業がかなり強い存在だ。でも個人でも積極的に攻められるメディアを使ったアプローチで自分の価値(ブランド)を高めているつもりだ。
イノベーター
また物流YouTubeは物流業界の教育改革に一役かっている。これまでの国際物流の知識は非常に分かりにくかった。テキスト情報のみで専門用語を解説されたら、理解するのは本当に難しい。
僕のアニメーション動画は多くの視聴者さんから分かりやすいと好評を得ているのだが、このアイデアは既存の書籍解説YouTuberをパクって物流に特化したものだ。
リーダー
そしてタイのフォワーダーの会社の社長として、一応 リーダーとしても活動をしている。僕はオペレーションには基本的に参加しない。会社の方向性を決めて、タイスタッフのマネジメントは相方に任せながらも、相方とスタッフと共に業績を上げていっている。
個人的にリーダーシップはまだまだ伸ばしたい能力なので、今後も勉強して行く予定だ。最近はタイ語も改めて勉強するようになった。
投資家
最後に投資家についてだが、現在僕は物流業界で働くことをコミットし、業界の情報、マーケットの流れに常にアンテナを張っている。この情報収集はマーケッターとしての活動にも役立っており一石二鳥だ。
自分の知識、会社、ネットワークを使い自分自身を物流業界に投資をしているので、今流行りの米国インデックス投資にくらべてリターンが遥かに良い。
とにかく自分自身がコモディティーにならないように意識をしています。
まとめ
正確な未来予測をすることは僕ら凡人に出来ることではない。しかしテクノロジーが発達していき、より便利な社会になっていくのは見えている。車の自動運転、IOT、ドローン、A.I、ブロックチェーンの存在を考えると、市場はガラッと変わっていくのは間違いない。
そんな社会で自らの価値を見出して、グローバル市場で活躍する存在になる為には 今回ご紹介した武器を手に入れる必要があるだろう。
僕自身は若くなし、著者のように賢くもないが、君たち若者の参考になる情報を身体を張って発信していきたいと強く思う。